しかし、その声はもう揺らがない。

「でも、もう大丈夫」

その真っ直ぐな声に、瞳に、その場にいるクロスメイアスやアキ達が安堵以上の安らぎを覚えたのは言うまでもない。
話の変わりを知らせるように声は明るい調子に変わる。

「彼にもお礼が言いたかったな。えっと…」
「クルテッドの事かい?」

リンが「そう」と頷くとアキは苦笑混じりにその指の長い手を顔の前で振って見せた。

「あいつは診る必要のある奴のいる所にしか現れないのさ。捜したって出て来やしないよ」
「そうなんだ…残念だな」

「……主」

突如としてピンと張り詰めた声を発したクロスメイアスにリンが頷く。


「クロはアキ達を守ってて」
「しかし…」

「久しぶりにちゃんと体、動かしたいんだ」

クルテッドはどうやら羽にしぶとく残っていた毒の方も処置を施してくれていたようで、リンは何日かぶりにその腰の翼を大きく広げた。


「…くれぐれも、ご自愛なされよ」
「了解、ありがとうクロ」



クロスメイアスが心配するのも無理はない。