バイクのエンジン音が遠ざかっていく。

暗闇の奥で彼の後ろ姿が見えなくなると、楓は無言で自宅に向かった。


「楓」


ガヤがあたしを呼んだけど完全無視。


「楓サン、総長が呼んでますよ」


セイジの声も聞こえたけど、それも無視。

今のあたしはサイコーに気分が悪い。


「お前、今日ジュンと会ったんだってな」


ため息交じりにガヤが言った。

その時、ぷちっと頭の中で何かが切れる音がした。

楓は勢いよく振り返って彼らを睨みつける。


「だからなに」


自分でも驚くぐらい低い声が出た。


「BLASTの誰かにジュンのことを聞いたんだろ。二度と関わるなって言ったのになんで言うことを聞かねえんだ」


――はあ?


一気に頭に血が上る。


「言うことを聞かないのはガヤのほうじゃん。イツキさんは家まで送ってくれただけなのになんであんなひどいこと言うこわけ?」

「おい楓」

「大体純平くんのことだってどうしてイツキさんを責めなきゃならないの」

「は?当然だろうが。あの男は仲間を見捨てたんだ」

「違うよ。悪いのはイツキさんじゃなくて犯人でしょ。ガヤは憎む相手を間違ってる!」

「お前、あいつの肩持つのか」

「あたしガヤのそういう意地っ張りなとこ大嫌い。少しはイツキさんの気持ち考えなよ!」