「ただオレらはもう高三だ。いつまでも遊んでいられねえのが現実。どっちにしろ夏が過ぎたら卒業するつもりだった」


ガラス製の受け皿に、灰が落ちる。


「でも正直なところ、このまま卒業してもオレらが気分悪りいっていうのが本音だ。あの事件が起きてからBLASTは死んだみてえに暗い。だから解散する前にもう一度昔に戻りてえんだよ。何も考えねえで仲間と一緒にバカやって笑ってたあの頃にな」

「あん時ゃ楽しかったよな」


タクマが同感だと言わんばかりに相づちを打つ。


「そのためにはこの手紙をジュンに渡してくれねえと何も始まらねえんだ」


楓はあっと驚いた。

あのカズが頭を下げたのだ。


「女、頼む。この手紙をジュンに渡してくれ」


ふと、あの写真が目に入る。

ガヤとイツキ、そしてジュン。

きっとその時が一番幸せだったのだろうと思わせるほど、彼らの表情は希望に溢れてきらきらと輝いていた。

楓は茶封筒を握りしめる。


――もう二度とあいつらとは関わるな。


またガヤに怒られるかもしれない。

それでも意を決したように小さく頷いた。


「分かりました。あたしに任せてください」