ブルル、と外でエンジンの音がかかる。 ガヤだ。 楓は部屋を出ようとして、そこでやっと異変に気付いた。 辺りを見渡すが、それらしきものは見当たらない。 机の下や、ベッドの下。 クローゼットの中。 あらゆるところを探してもどこにもない。 それは忽然と姿を消してしまっていた。 あれ…。 どこに置いてきたんだろう。 どこに。 どこ―――。 楓ははっとした。 そしてごくり、と生唾を飲み込んだ。 まさか。 まさか。 まさか。 まさか!