B L A S T


やがて、遠くでバイクの走る音が聞こえた。

一台ではなく、二台、三台と。

次々と爆音は通り過ぎていき、まるで威嚇しているかのようにそれらは延々と周辺を走り回っていた。


「あの野郎。完全にオレらをナメてやがる。うるせえ!」


さっきまで木刀を持って怯えていた姿はどこへ消えたのか、カズが怒鳴り散らした。

裏門ではテツと同様、チームのみんなが戸惑っている。

見かねたイツキが彼らに向けて声をかけた。


「心配するな。この女を返すだけだ。お前らは絶対顔を出すなよ」


さすがはリーダーというべきか騒ぎはすぐにおさまり、イツキに言われたとおり外から見えないよう全員一斉にその場に座り込んだ。

ふいにクラクションが鳴った。


「ガヤだ」


裏門の外に出たとたん、目の前がライトの光で明るくなり、あまりの眩しさに目を覆った。

地響きは止まない。

ゆっくりと目を開くと、裏門から数キロメートル先ほど離れたところで彼らはいた。


――"風神"。


先頭に掲げられている旗で風を操る鬼の顔がゆらゆらと揺れている。

その奥でおびただしい数のバイクや車に囲まれながらガヤが一人立っていた。

醸し出している雰囲気は怒の感情以外何者でもない。

一斉にライトの光が楓に向けられ、


「来い!」


とガヤの叫ぶ声がした。