B L A S T


甘い香りを漂わせて、イツキは外に出た。


「そろそろ来る。行くぞ」


いつの間にか雨は止んでいる。

所々にできた水溜まりは満月が綺麗に映し出されていた。

裏門に向かう前、タクマとカズは慌ててプレハブに戻った。

何を取ってきたかと思えば、彼らの手に木刀がしっかりと握られているのを見て呆気にとられた。

隣でイツキがため息を吐いている。


「一応な。殺されたくねえし」


とカズは苦笑いを浮かべた。

タクマも同意と言わんばかりに頷いている。

意外と彼らは見かけによらず臆病なのかもしれない。

そういえば、拉致された時、二人して車内でチビったとかどうの話をしていたし。

…なんだか、ビビって損した気分だ。

ガヤに助けを求めたのも意味がなかった気がする。

楓は二人を巻き込むのもかわいそうな気がして、ガヤに連絡しようかと思ったが、ケータイの電池が切れていたのを思い出した。

イツキに恐る恐るケータイを貸してもらえるかと頼んだけれど返ってきた答えは冷たいものだった。


「あいつ、俺の番号は着信拒否ってるからかけても出ない」


何と声をかけていいのか分からず、口を噤む。

ガヤのことになると、イツキは態度がよそよそしくなる気がした。

なにが彼をそうさせるのか。

気になるあまり、楓は大胆にもイツキに問いかけた。


「どうしてガヤをそんなに毛嫌いするんですか」


突然の質問に彼は瞬きを繰り返し、楓をじっと見つめる。


「…単刀直入だな」


と呟いて、困ったように眉を寄せた。