その中で騒ぎ立てるカズとタクマをよそに、イツキだけが妙に落ち着いていた。
二本目の煙草に火を灯しながら遠くを見つめている。
「おいイツキ。黙ってねえで何か言えよ。あの男、絶対イカってる。どうすんだよ」
「今から数集めるにしても時間はねえし。例え集まったとしてもケタが違う。オレら、無駄な争いはしたくねえからな」
イツキは肩で息を吐いた。
その表情は呆れている。
「…そもそもお前らがあの男の女をさらってきたのが悪いんだろうが。そういうのを自業自得って言うんだよ」
タクマとカズの目が一斉に楓に向けられた。
痛いところを突かれた彼らはぐうの音も出ない様子だ。
「どうするもなにも、大人しく女を返せばいいだけのことだろう」
と何でもないようにイツキが答えると、カズは声を荒げた。
「でもあの男だぞ。大人しく引き返してくれると思うかよ」
確かに。
カズの意見に、楓も思わず同感だ。
イツキは薄ら笑いを浮かべる。
「大丈夫だ。あいつは喧嘩っ早いが無駄な喧嘩はしない主義だからな」
まるでガヤのことをよく知っているかのような口ぶりだった。
――あいつはもう仲間じゃない。
もしかしたら彼らは以前仲が良かったのかもしれない。
それが何かのきっかけで関係が壊れてしまった。
だとしたら一体、彼らの間に何があったのだろう。

