「"風神"は今んとこ関東でトップだからな。数も半端ねえ。もしあの男がここに来てみろ」
「確実に戦争が起きるな」
とカズとタクマが苦笑いを浮かべている。
楓はゆっくりと生唾を飲み込んで、「あの、」と重い口を開いた。
「その"風神"って…、誰がリーダーでしたっけ」
一瞬の間が空いた。
カズが眉をしかめ、楓を睨みつける。
「お前なに言ってんだ。"風神"のリーダーは藤ヶ谷彬だろ。お前の男が仕切ってんだろうが」
楓は頭を抱えた。
――やっぱり、だ。
予想していたとおりガヤの名前が出て、気が遠くなる。
「…その様子だとあの男を助けに呼んだんだな」
とイツキがため息交じりに呟いた。
恐る恐る頷くと、カズとタクマが悲鳴をあげる。
「やっべえ!オレら確実に殺される!」
知らなかったとはいえ、楓はガヤに助けを求めたことに後悔した。
もしかしたら自分はとんでもないことをしたのかもしれないのだ。
ガヤは"風神"のトップ。
イツキもまたここのチームのトップ。
今までの会話を聞いていると、どうも敵対しているらしい二人を引き合わせることは非常にまずいことなんじゃないかと思った。
まさにタクマが言った"戦争"が起きかねない。

