「も、もしもし…」
イツキと話するのは久しぶりだ。
なんだか緊張する。
「……」
ーーーてあれ?
楓はもう一度画面を確認した。
ちゃんと通話中と表示されているはずなのに、受話器の向こうからは無言だけが続いている。
えっなんで。
「イ、イツキさん…?」
すると、受話器の向こうでイツキがため息を吐いた。
≪…あんたさ≫
「は、はい!」
思わず体が強張る。
顔を見なくても分かるその低い声は明らかに不機嫌モード。
やっぱり怒ってる。
でもなんで?
やがて今度は呆れたようなため息が聞こえた。
≪…どうしてあの場所にいたんだ≫
「あの場所って…」
≪前に言わなかったか。もう無茶だけはするなって≫
あっ、と楓は青ざめた。
どうやらイツキはあたしが工場にいたことを怒っているらしかった。
「あの時は、その…無我夢中で。どうしてもイツキさんを助けたくて」
三度目のため息。
やばい。
久しぶりに話すのにため息しか聞いてない。
今度こそ呆れられちゃったかも。
「ご、ごめんなさい…」
≪もういい≫
返ってきた冷たい口調。
…ですよね。
もういいですよね。
やっぱり呆れられちゃったんだ。
こんな野蛮な女とは付き合ってられないってきっとそう思ったんだ。

