「殺れよ」
セイジは天井を見つめたまま言った。
「僕はこの世に未練なんてない。死んでもかまわないと思ってる」
「…」
「だから殺れ」
イツキは黙ってセイジをじっと見下ろしている。
そしてガン、と大きな音が工場内に響いた。
イツキが蹴り上げたのはそばにあった椅子だった。
「死んでもいいなんて簡単に言うな」
「…」
「世の中には生きたくても生きられねえ奴がごまんといるんだ。命を無駄にするな」
「虫酸が走る。それが族を仕切ってる男の言うことか」
「何とでも言え。生きてる限りはなんだってできる。喧嘩も受けて立つよ」
仲間に支えられながらセイジはゆっくり起き上がると、そのまま出口に向かいながら言った。
「…言っておくが、僕はしつこいと評判でね」
イツキは笑みを浮かべる。
「上等だ。いつでもかかってこい」
「その言葉、忘れませんよ」
そうしてイツキとセイジの決戦は幕を閉じた。

