ぽつぽつ、と雨がまた振り始めた。
強い風が吹きつけ、古びたシャッターががたがたと揺れ動いている。
セイジとイツキは互いを睨みつけたまま微動だにしないでいた。
「今夜は嵐だな」
やがてイツキが大きく背筋を伸ばした。
「手加減しませんよ、イツキさん」
セイジが髪を掻き上げる。
こっちの台詞だ、とイツキは言った。
雄叫びが上がる。
そこはやけに静かな空間だった。
まるで音のない映画を見ているようなそんな感覚に襲われた。
気が付いた時にはイツキが空を飛んで、右足を振り上げている。
まるで風のように、一瞬。
血がとばしる。
さっきまで息を上げていたのが嘘のようにイツキはしなやかに、次々と技を繰り広げていた。
その無駄のない動きに、セイジはついていくのがやっと。
ーー風が蛇を操っている。
おれの目には確かにそう映っていた。
「イツキィィィーーーーーーー!!!!!!」
そして、
蛇は竜と共に天に昇った。

