おれはバイクに跨ると、煙草に火を灯した。


≪…ちょっと確認しておきたくて≫

「…確認?」

≪イツキさん、大丈夫?≫


ふと、後ろを振り返る。

タクマやテツがメンバーに戻ってくるようケータイで促している。

工場に残されたのはイツキ、ただ一人。

灰を地面に落とし、おれはぽつりと呟いた。


「…あんなやつ、知るかよ」


えっ、と楓の声。

苛立ちが募った。


「あんなやつ、知るかって言ったんだよ!」


少しの、間。


≪…なに怒ってるのよ。イツキさんと何かあった?≫


おれは素っ気なく返した。「お前には関係ねえよ」

その言い方にかちんときたようで楓が声を荒げて言った。


≪何よそれ!イツキさんと何があったか知らないけどあたしに八つ当たりしないでくれる!?≫

「うるせえ。もう切るぞ」

≪ちょっとガヤ!聞きなさいよ!≫

「んだよ…」


おれはうんざりしながらケータイを耳元に戻した。


≪…あんた約束したんじゃなかったの?≫

「何をだよ」

≪さっき由希さんが家に来て教えてくれたの。ガヤ、由希さんと約束したんでしょ。イツキさんを生きて帰らせるって言ったんじゃなかったの!≫


ぎょっとした。