車に乗り込み、、おれは開口一番に言った。


「タクマ。飛ばしてくれ」


ぐん、と車体が大きく揺れる。

流れる景色に目をやりながら、ケータイの通話ボタンを押した。


≪おかけになった電話番号は現在電波の届かないところにいるか…≫


それからも何度もイツキのケータイに電話をかけるが、繰り返されるアナウンスに舌打ちを鳴らした。


ーーくそ。間に合えよ。


セイジのアジトまであと30分もかかる。

それまであいつが一人で勝手な真似をしなきゃいいが。

その時、どこからか着信音が鳴り響いた。

おれのケータイじゃない。

辺りを見渡すと、おれの隣にあったクッションの下で別のケータイがランダムに光っていた。


「悪りい。オレんだ。藤ヶ谷、すまねえが代わりに出てくんねえか」


ああ、とおれはそれを手に取る。


「もしもし」

≪タクマさん!大変です!≫


それはセイジのアジトに先回りしていたBLASTのメンバーからだった。


「どうした。何かあったのか」

≪その声は…もしかして藤ヶ谷さんですか?≫

「ああ。今タクマは手が離せない。何かあったらなら手短に話せ」

≪はい!実はさっきセイジがカズさんを連れてどっか行っちゃったんですよ≫


おれは眉をひそめる。


「ンだと。感付かれたのか!?」

≪分かりません。とにかく今から後を追いますので行き先が分かったらまた連絡します≫

「待て。お前らだけで動くのは危険だ。もうすぐそっちに着く。おれが指示を出すまでそこから動くな」


セイジは頭がいい。

恐らく、おれらの動きに気付いている可能性が高い。

下手に動いたら命取りだ。