「先生呼ぶか?」
「いや、大丈夫だ」
「…やっぱりその体じゃ喧嘩は無理なんじゃねえか。先生にも安静してるように言われてんだろ」
イツキは少し間を空けてから言った。
「どっちにしろもう使えない体だ。だったら最後まで有効に使わないとな」
最後、と聞いておれは眉をひそめる。
「…捨て身になんなよ」
「冗談だ」
イツキはくっくっと肩を揺らしていたが、おれはとても笑う気になれなかった。
「とにかく俺は行く。お前は先に行って準備しておいてくれ」
「……」
「彬、聞いてるのか」
おれは小さく俯いた。
「止めても無駄なんだな」
黒々とした瞳と目が合う。
イツキは表情を変えることなくただ小さく頷いた。