「本気で言ってんのかよ。見物しに行くんじゃねえんだぞ」
「当たり前だ。俺がセイジのとどめを刺す」
「イツキ、考え直せ。今お前そんなことしてる場合じゃねえんだろ」
イツキはかっとなって言った。
「仲間が痛い目に合っているんだ。俺だけ自分のこと考えていられるか」
おれは悩む。
イツキは一度言い出したら聞かない。
止めても無駄なことをよく知っていた。
「…分かった」
苦渋の決断だった。
「ただしお前の相手はセイジだけだ。必要以上に動くな」
にっとイツキが口端を上げる。
「十分だ。悪いな、彬」
「あまり無理するなよ」
「分かってる」
イツキは壁時計を目をやると、ゆっくりと立ち上がった。
「もう行く時間か」
「ああ」
おれは少し間を置いて訊いた。
「その前にちょっと確認してもいいか」
「何だ」
「楓のことなんだけどよ」
イツキと目が合う。
「…あいつ、今もここに来てるか?」

