デスクの前に座り込んでから何時間が立ったのだろうか。

楓はデスクをじっと見つめたまま微動だにしなかった。

その引き出しを開ければ奥に淡いブルーのメモ用紙がある。


――一兄のことが気になるのならここに行ってみて。


ジュンに渡されたあの手書きの地図に何かヒントが隠されているのだろうか。


――迷惑なんだ。


イツキがあたしを避ける理由も分かるのかもしれない。

由希のあの言葉の意味も。


――なんでお兄ちゃんだけが辛い思いをして我慢しなきゃいけないの。


だけど正直、怖い気持ちもあった。

何が怖いかと言われると分からないけれど、何かが壊れてしまいそうな気がして、あたしはなかなか一歩踏み出せずにいる。

でもこのままじゃいつまでも前に進めない。

あたしも。

きっと、イツキも。






ゆっくりとデスクの引き出しに手を差し伸べる。






そして、あたしはパンドラの箱を開けた。






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