楓は目を丸くする。

彼女の肩が微かに震えている。


「あなた本当にイツキ、お兄ちゃんのことが好きなの?」

「えっ…」

「あなたはそれでいいかもしれないけど、少しはお兄ちゃんの気持ち考えたらどう?…なんでお兄ちゃんだけ。私は、お兄ちゃんには幸せになってほしいのに。なんでお兄ちゃんだけが辛い思いをして我慢しなきゃならないの」


楓は彼女の言葉が飲み込めないでいる。

イツキが辛い思いをして我慢している―――?


「…どういうこと?」


次々と大粒の涙が堰を切ったように溢れ出し、由希の白い肌を伝う。

彼女は楓を一瞥すると、また窓の外に視線を戻してしまった。


「由希さん」


何度呼びかけても、無視。

それからしばらくして楓が諦めようとした矢先、沈黙を破ったのは彼女のため息。


「あなたは人に聞くことしか脳がないのね」


そう言って真っ赤な目で楓を睨みつけた。


「そんなことぐらい自分で調べたら」