B L A S T


眠れぬ夜が明け、楓の足はプレハブに向かっていた


――彼に会いたい。


気が付けばその一心だった。

迷惑だと言われたばかりなのにあたしはなんて懲りないのだろう。

でもやっぱり彼のことを放っておけない。

諦めることなんかできない。

今会ったところでどうすることもできないけれど、彼のそばにいたい。

イツキのそばにいたい。

ただ、

それだけなのに。




「何しに来た」


その声は冷たい。

彼はプレハブの前でしゃがみ込んで待っていた楓をちらりと一瞥すると、そのまま素通りして体育館の方に行ってしまった。

体育館の裏にはいつもパールホワイトの車が停めてある。

どこかに出かけるのだろうか。

楓は慌てて彼の後を追った。


――やっぱり変だ。


学校は夏休みに入ったのに、今日もメンバーの姿は見当たらない。

体育館も校庭もどこも静かだ。

イツキも珍しく朝からプレハブに来ていた。

もしかしたら泊まっていたのかもしれない。

でも何のために?

すると突然、イツキが足を止める。

後ろから追っていた楓は危うく彼の背中にぶつかりそうになった。


「ついてくるな」


と彼は振り返って言った。