息子、と聞いて、楓は愕然とした。 まさか。 思わずイツキを見やる。 彼はいつまでも江原先生に背中を向けたままで、一切目を合わせようとしない。 そしてTシャツの胸元から覗く昇り竜のタトゥーを手で隠すようにして覆っていた。 「…一樹」 江原先生は今にも泣き出しそうだ。 「ごめんね…」 ぴくり、と彼の肩が揺れる。 やがて白い手が離れ、再び鮮やかな昇り竜が姿を現す。 「俺は…」 ざあ、と生温い風が靡いた。 「俺は、あんたのことをお袋と思ったことは一度もありません」 ――――― ―――――――