「思ってたより早かったよ」


えっ、とタクマを見上げる。

彼はまるでこの手紙が来ることを予想していたかのようだ。


「心当たりあるの?」

「前に似たようなことがあったからな。こういう陰湿なことやる奴はあの男しかいねえ」

「その男ってもしかして…」


あの細い目が脳裏を過ぎった。

笑っていても、実はその仮面をはがすと大蛇のように恐ろしく冷たい目をした男。


「セイジ、さん…?」

「恐らくな」


そういえば前にも同じようなことがあったような。


決闘を申し込む

断れば

同志が消えると思え


――風神。


あの時も手紙と同じで、この部屋が真っ赤に塗りつぶされていた。


「でもセイジさんって捕まったはずじゃ…」


確かBLASTと"風神"の抗争中に警察が割り込んできて、責任者として逮捕されたという話だ。


「噂じゃあ、あの後すぐに釈放されたらしい。あいつんとこの親、一応政治家やってんだ。大事な跡継ぎの経歴に傷を付けるわけにはいかねえから金の力で解決したってとこだろう」

「それじゃあ純平くんのことも…」

「あの事件はあいつは直接手を出してねえ。第一実行犯は捕まったし、それにあいつが命令したという証拠もない。警察も今さら掘り返すようなことはしねえよ」


楓は納得がいかなかった。


――僕はまだ捕まりたくない。


自分の手を汚さず、関係のない人を巻き込む。

本当にセイジは卑怯な男だ。