≪藤ヶ谷か。タクマだ。イツキのことだけどよ、今どこにいるか知ってるか?ケータイかけても繋がらねえんだ≫
その声にどこか焦りのようなものが感じられる。
ああ、とおれは答えた。
「イツキなら、今おれと一緒にいる」
タクマは安堵したようにため息を漏らした。
≪それならちょうど良かった。悪りいけど今からイツキと一緒にプレハブに来れねえか≫
「今から?」
おれはなんとなく嫌な予感がした。
「…なにかあったのかよ」
≪それは後で詳しく話す。緊急事態なんだ≫
チッ、と舌打ちを鳴らす。
一体、なんだっていうんだ。
おれはケータイの電源を切ると衣服についた砂埃を払いながらイツキに目をやった。
「おい戻るぞ。なにかあったらしい。緊急だってよ」
返ってきたのは相変わらず無言だ。
一向に腰を上げようとしないイツキに苛立ちを募らせた。
「おいどうした。タクマにお前も連れてくるように頼まれてんだ。早く立てよ」
「一人にしてくれ」
「…は?」
イツキは小さく吐息をついた。
「俺はいい。お前一人で行け」
その素っ気ない態度にカチンと来たおれは眉をしかめる。
「お前いい加減に――」
とイツキに掴みかかろうとしたときだ。
「彬」
イツキはゆっくりと立ち上がった。
そして砂埃を払いながら、
「お前、あの約束覚えてるか」
と言った。

