B L A S T


一体彼らの間に、何があったのだろう。

すれ違うときに一瞬だけイツキと目が合った。

その目は怒りに満ちていて、どこか寂しそうにみえた。


「あなた…」


えっ、と楓は振り返る。

いつの間にか由希が目の前に立っていた。

さっきまで頭を抱えて苦しそうにしていたのに、その顔は平然としている。


「あなた、藤ヶ谷さんと付き合ってるの?」

「えっ…」


楓は思わぬ質問に戸惑う。

ふふっ、と由希が微笑を浮かべた。


「この間病院で初めて会った後あなたと藤ヶ谷さんどこかに出かけていったでしょう。今日も一緒に来たみたいだし、ずいぶん仲が良いのね」


どうやら海に行くところを彼女に見られていたようだ。

楓はかぶりを振った。


「そういうんじゃないです。あたしとガヤはただの幼なじみですから」

「ふうん。そう…」


由希は赤いソファーにもたれ座ると、白い足を組んだ。

それから窓の外に目をやる。


「私ね」


と由希は言った。


「暴走族が嫌いなの」

「えっ」


突然の発言に目を丸くしていると彼女はまた小さく笑った。


「時々思うの。暴走族って何のためにいるんだろうって。だってあの人たちは結局一般人を困らせるようなことばかりしてるわけでしょう」

「…そうかもしれませんけど」


楓は口を噤んだ。

確かに彼らのやっていることは理解不能だと思うときはある。

でも…―――。