B L A S T


夏の季節にもかかわらず、空気が冷たく感じる。

夜の体育館は入ったことがないが、不気味な静けさがまるでお化け屋敷を思い出させた。

どこのスイッチを押しても天井の蛍光灯は点かない。

廃墟なのだから当然電気は通っていないと分かっていても、この薄暗い廊下をひとりで歩くには勇気がいる。

すると隣の扉から小さな物音がして、どきりとした。

体育館の中からだ。

たぶん中は誰もいないはず。

でも心なしか、ボールを転がす音が聞こえるような……。

まさか。

中は誰もいないはずじゃ。

電気も点いてないし。

点かないだけかもしれないけれど。

まさか。
うん、まさかね。

まさか。
ユーレイだったりしないよね。

まさか…
ユーレイ…
幽霊…。

怪談話が苦手な楓は恐怖に耐えきれなくなって、廊下の突き当たりにある女子トイレまでダッシュで走った。


「ひゃっ!」


入って突然目の前に現れた黒い人影に、心臓が大きく跳ね上がる。

よく見るとそれは荒い息をしながら肩を震わせて青白い顔をしている――――――――――――――――――――楓。

鏡に映る自分だった。