それからの夜は賑やかだった。

床下は大量の空き缶や菓子袋が散乱している。

メンバー全員で輪になって杯を交わしたり、外で花火をやったりと以前敵対していたとは思えないほど、BLASTと"風神"は一緒になって盛り上がっていた。


「オレ、楓さんのこと尊敬しますよ。セイジさんに手を上げるって男でもなかなかできないことなんですからね」


舞台の上でテツと話していたら酔っ払った"風神"のメンバーたちに絡まれた。

どうやらタクマが言っていたとおり、彼らの中であたしのやったことは伝説として語り継がれているらしい。

全然嬉しくない。

むしろ忘れていてほしいのに。


「さすが"無敵の楓ちゃん"と呼ばれるだけありますね。オレも呼んでいいですか」

「結構です」


もちろん、断固阻止。

まったくどこでその呼び名を聞きつけてきたんだろうか。

後でガヤをこらしめなきゃ。


「そういえばガヤ、どこに行ったんだろ」


楓は体育館の中をきょろきょろと見渡した。

さっきまでメンバーと一緒にいたのに、ガヤの姿がない。


「イツキさんもいないスね。プレハブにいるんじゃないスか」


とテツが腕時計に目をやる。


「そろそろジュンが来る時間スから」