B L A S T


「おいテツ。総長は?」


タクマは先立って道を開けてくれたテツという男に訊いた。

以前、暴走族は上下関係が厳しいとガヤに聞いたことがある。

テツがやけにお辞儀してる様を見ていると、タクマとカズはここの中で位の高いところにいるらしい。


「まだ見えてないス。もしかしたら今日は来ないかもッス」

「マジかよ。だとしたらオレらは走り損ってわけか」


落胆するタクマに、カズは言った。


「もし来なかったら呼び出しゃいいだけのことだろ」

「それもそうだな。あ、そうだテツ」


タクマは思い出したようにジーパンのポケットの中から財布を取り出して、千札を何枚かテツに渡した。


「悪りい。買い出し頼まれてくんねえかな。今冷蔵庫ん中空っぽなんだ。適当なものでいいからよ」

「了解ッス」


テツは深く一礼して、ヘルメットを被りながら裏門のそばに停めてあったバイクに跨った。

ブルル、とエンジンがかかるとカズがテツの背中に向けて大声で投げかける。


「テツ。イツキが戻るまでな」

「もちろんッス」


―――イツキ。

初めて聞く名前。

もしかしてその人が例の。


「あの…」楓は恐る恐る聞いてみた。


「その"イツキ"って…誰なんですか?」


なにが気に入らなかったのかカズが軽く舌打ちをする。

それからライターを取り出し、黙って煙草を吹かす。

楓の質問は素通りだ。

ムカッ。

なにこいつ。
やっぱり嫌な感じ。

するとタクマがカズに代わって答えてくれた。


「イツキが総長なんだよ、嬢ちゃん」