気が付くとそこはベッドの上だった。

もうろうとしながら天井を眺める。

辺りは真っ暗でほとんど何も見えない。

しばらくして暗闇に目が慣れると、楓はゆっくりと起き上がった。


――ここは、どこ?


コンクリートに囲まれたその殺風景な部屋は窓が一つもなく、代わりに換気扇の回る音が聞こえる。

ベッドの向かいには出入り口らしき扉があった。

ドアノブに手をかけてみると鍵がかかって開けられず、ノックをしても応答はなかった。

確かあたしはジュンの病院に行っていたはず。

それから帰ろうとして、どうしたんだっけ…。

とたんに頭痛が走り、思わずしゃがみ込む。


――悪く思うなよ、女。


そうだ!

変な男たちが追いかけてきたんだ。

楓は男たちに布のようなもので口元を覆われたことを思い出した。

それ以来記憶がないということは恐らくあの布に何か眠らせる薬でも入っていたのだろう。

ひどく頭が痛い。


「最悪…」


どうやらあたしはまた拉致されたらしい。

ただ前と違うのは相手がタクマやカズではなく、今回は新たな見知らぬ男だということ。

パンダナを顔に巻きつけたあの骸骨男は誰だったんだろう。

そういえば、骸骨男は言っていた。


――オレらはあんたを連れてくるよう上から命令されただけでさ。


ということは彼らの上に立つその人が中心人物。

一体、誰が何のために。

どうしてあたしを。