やっぱりだめか。

思っていたより、彼の決心は固く結んだ紐のように動かない。

楓は落胆して、ミルクティーを飲み干した。

でもテツや他の残されたメンバーのことを考えたら、心のどこかで諦めきれない自分がいる。

ここは単刀直入で行くしかないと思った。


「イツキさん」

「なんだ」

「BLASTに戻ってきてください」


ふいにイツキの目色が変わる。


「…嫌だと言ったら?」


楓はごくり、と生唾を飲み込んだ。


「これは総長命令です」


イツキが驚いたように目を丸くする。

それから彼は少し口元に笑みを浮かべて、煙草を吹かした。

生温い風を追うように甘い香りは星空を舞っている。

その奥で一番星がきらきらと輝いていた。


「メンバーのみんなはイツキさんが大好きなんですよ。みんなにとってイツキさんはきっと希望の星なんだと思います」


くくっ、とイツキは肩を揺らした。


「俺が希望の星?あんた面白いこと言うな」

「あたしは本気で言ってるんです」


楓の真剣な眼差しに、彼の笑みが消えた。