「さーすが楓さんスよね!」

「いえそれほどでも」

「あのブザービートむちゃくちゃかっこよかったス。もはや神業スよ、神業」

「やだ、テツくん。あまり褒めないでよ」


照れ隠しで背中を叩くとテツは痛い、といって欠けた歯を見せた。

試合は10点差で赤チームの勝ち。

小、中学とバスケ部で全国大会まで出場したことのある楓にとってなんてことのない試合だった。

それにしても面白かったなあ。


――総長!明日こそリベンジしてみせます!


その悔しがる様はまるで小学生みたいで、いつの間にか彼らを怖いと思うことはなくなっていた。

ついこないだの批判が嘘のようだ。

いつの間にか仲良くなっちゃったし。

やっぱり暴走族とはいえど、みんな普通の男の人なんだよね。

うん。


「楽しかったか?」

「うん。すごく楽しかった」

「それはよかったな」

「うん。って、…げ!」


大魔神のお出ましだ!

慌てて振り返ると、怒のオーラを漂わせて険しい顔をしたカズが立っていた。


「なんでてめえがメンバーと仲良くバスケなんかやってんだ」

「え、そのテツくんに誘われて…」

「へ!あっいや、はい。気晴らしにと思いまして。楓さん元バスケ部だけあってめちゃくちゃ強いんスよ」

「そんなことはどうだっていいんだよ」


カズの荒い口調に、テツは肩をすくめた。