最期はラドと歌いながら死にたかった。
 昔、病にかかった人が最期、死ぬ間際は普通に戻っていた。
 だから、時間がない。
 嬉しいのに、幸せなのに、涙か流れた。
 あのとき、菌を注射しなければ良かった。
 もっと、彼との時間を大事にすれば良かった。
 好きな人の腕の中で死ぬのが幸せだと思っていた。でも、悲しすぎる。
 離れたくないのに。
 最期に、彼の顔を覚えておきたいと振り向いた。
 彼が不思議そうに、手を伸ばしてくる。それにつかまりたかった。
 でも、体は後ろに倒れていく。
 もう、お別れなんだ。
 そう思って、目を閉じた。