まだ日の昇っていない朝。どうしてか、彼が来るって気がしたの。
 だからね、すぐベッドから下りて、外に出たの。
 彼が、私に気がついてくれるように。夢が現実になるように。
 しばらくそうしていたわ。時間なんて、感じられないくらいだった。
 突然、何かがぶつかったみたいに体が揺れたの。
 何か、音がするなってのはわかったの。
 顔をつかまれて、動かされた気がした。
 それをしているのが、誰なのかは見当はついていた。
「ラドなの?」
そういったつもりだけど、たぶん言えてない。
 私は頬に触れているだろう手を取って、文字を書いた。
 わかってくれるか不安だったけど。
 でも、わかってくれた。それに、ラドだった。
 嬉しかった。でもその反面、怖くなった。
 またラドがここに来てしまったら、だめなのに。
 自分でも、だめな理由が浮かばなかったが、だめなんだ。
 あんなに冷たくしたのに。
 ラドは、私のそんな気持ちに気づいていないから、いたいなんて言う。
 私だって、一緒にいたいのに、だめなの。
 ラドが好きだから、一緒にいられないのに。
 でも、私の心は弱い。もっとも望んでいる事を彼に言ってしまった。
 不思議なことに、後悔してないの。あのとき、素直になれて良かった。本当に。
 抱きしめた彼のぬくもりが感じるような気がして、嬉しかった。