白いかけら

 後から知った。お兄ちゃんはあの不治の病を研究していた科学者だって。そして、その病気の治す薬を作ろうとしてたみたい。
 でも、できる前にこの世界の人は私を除いて死んでしまったみたい。
 この世界から誰一人として出入りができなかったのは、病気がほかの国に感染しないようにという、対処だったようだ。
 私たちは知らないうちに、この白い世界に軟禁されていたのだ。
 私がなかなか感染しなかったのは、いつの間にかお兄ちゃんに注射された試作のワクチンのおかげみたい。
 まだそれも完璧じゃなかっみたい。
 私はお兄ちゃんの研究品の中にあったあの病の菌を、私は注射した。
 このとき、自分が犯した過ちに気がつかなかった。
 ただ、一人が寂しくて悲しかった。
 独りになるくらいなら、死んだ方がいいって。
 それから数日。私に症状が現れだした。
 これで死ねるって、喜びがなぜかなかった。ただ、恐怖だけだった。
 食欲も落ちた。感覚もなくなった。
 毎日、雪の上でお兄ちゃんやまちのみんなへ、レクイエムを歌っていた。