「あららーん、泣かせちゃった」

場違いな明るい声に、殺気を込めた視線を投げる。

時田は「おっと」と片手で口を塞ぎ、横目で俺を見た。

「だーかーらーいちいち睨まないでよ浅倉っち。怖いじゃん。俺、泣いちゃうよ?」

時田は、俺を扇ぐように手の平を振り、へらへら笑いだした。

「………」

正直、

こいつが何を考えているのかつかめない。

それがやけに気持ち悪くて余計に警戒心がわいた。

「………」

「はいはい。ゴメンゴメン」

沈黙を続ける俺に、両手を上げて降参ポーズをとる。

「でも、二股は真実でしょ」

ぽつんと呟くように言って、時田は顔から笑みを消し、ミコトが走り去った方向へ目を向けた。