「帰る」

震える声でやっとそれだけ告げた。

蓮くんの手を擦り抜けて、俯いたまま走り出す。


世界は歪んでて、足元は覚束なくて。


立ち止まったら破れてしまいそうな、

脆くて薄い膜の上を歩くように

不安定な足をただ、必死に動かした。

「ミコ!」

呼び止める蓮くんの声から逃げながら


本当は


繰り返し


祈り続けていた。