「ミコ、立てる?」

「…ん、大丈夫」

ゆっくり腕を持ち上げられるようにして、立ち上がる。

少し足元がふらついているわたしの肩を、片手で抱きよせて支え、心配そうに覗き込んでから、蓮くんは時田くんに、向きなおった。

「……なんのつもりだ」

冷たい声に、びくっとして見上げる。

鋭利な刃物のような目で、蓮くんは時田くんを睨み付けていた。

「なんのつもりって。別にー」

蓮くんの怒りに動じた様子もなく、時田くんは伏目がちに、緩んだネクタイを弄んでいる。

「挨拶しただけだもーん」

「気安く近寄るなって言わなかったか?」

「さあ、どうだっけ?」

そっぽを向いてとぼける時田くんに、蓮くんは苛立ったように舌打ちした。