少しだけ傷ついた顔をして、彼は肩を落とし、ため息をついた。

「やっぱ佐和ちゃんの視界には浅倉っちしか入ってないか。残念」

悔しげに片目を細め、それからすぐに気を取り直したように、にかっと八重歯を覗かせる。

「俺は、浅倉っちと同クラの時田一樹だよ。よろしくね」

「………」

差し出された手を、わたしは黙ったまま見つめた。


筋のある、大きな手。

男の人の手。

…………手。


ゾクリと背中に悪寒が走った。

瞬間、閉じ込めた記憶が溢れ出して、頭を押さえて後退りした。



手。

テ。

テガ、追ッテクル。