……こんなに、寒かったっけ?


朝の空気の冷たさに襟元を押さえて、身を震わせた。

鞄を胸に抱き、学校までの道程を、一人で早足に歩く。

わかってる。

寒いのは気温のせいだけじゃない。

蓮くんが隣にいないから、だ。


目頭に溜まる涙を、自分で制御出来なくて、瞬きを繰り返した。

瞳だけが、じんわりと熱を帯びていく。

アスファルトの道も、

その道を挟むように立ち並ぶ、似たりよったりの家々も

黄色い葉を落し始めた街路樹も

全てが、歪んでかすんでいく。


泣いたらダメ。

変に思われちゃう。


そう思うのに、

唇を噛み締めても、雫は勝手に瞳からぽたぽたと落ち出して、冷えた手を濡らした。