座り込んだままのミコトの傍に落ちたネクタイを拾いあげる。

彼女の前に膝をつき、そっと衿に通した。

「蓮くん?」

無言のままの俺を、不安げにミコトが見上げる。

俺は衿を整える手を止め、ミコトを見つめた。

「………やっぱ時田を殴っときゃよかったかな」

溜息混じり言って顔をしかめる。

「蓮くん?」

問い返すミコトの肩を抱き、胸に引き寄せた。

「今まで、はっきりしなくて、ごめん」

甘い香りのする髪に顔を伏せる。

「僕はずっと、キミに触れるのを躊躇ってた。
自分が鳴海と同じになってしまいそうで怖かったんだ。
だったらいっそ、幼なじみのままでいいと思ってた。
でも、やっぱり他のやつがミコに触れるなんて堪えられない」

身体を離し、顔を寄せる。

「……キミが好きだ」

瞳を覗き込み、そう告げると

「………うん」

ミコトが微笑んで、俺を見た。