「真由の意識が戻ったぞ」

ビクッと時田の肩が揺れる。

「……ただ、流産のショックで、かなり取り乱してるらしい。
さっきお前のお袋さんから、病院に来てくれないかと連絡が……」

「……俺は、行かない」

時田は言って腕で顔を覆った。

「時田」

呼びかけながら、屈んで時田の肩を掴む。

「子供の父親はお前だよな?」

時田が顔をあげ、目を見開いた。

「真由の傍に行ってやれ」

俺の言葉に時田は弱々しく首を振った。

「……俺は、行けない」

ふらりと立ち上がる。

「逃げんのか?」

そのまま脇を通り過ぎようとする時田の背中に、鋭く言葉を投げ付けると、時田の唇に自嘲じみた笑みが浮かんだ。