――何処にいる?

ひとつひとつ教室を覗きながら、廊下を足速に進む。
――まさか、ミコトと一緒か?

ミコトの携帯を呼び出し、程なく帰って来た圏外アナウンスに、俺は胸騒ぎを覚えて、駆け出した。

時田が真由を愛していたとして

奴がミコトに近づいた目的はなんだ?


「藤平!」

ノレンをくぐって出て来た、ミコトのクラスの学級委員が、驚いたように俺を振り返った。

「佐和ミコトは?」

早口に尋ねる俺に藤平は困ったように頭をかいた。

「あ、佐和さんなら、さっき交代で出ていったけど……」

最後まで聞かず踵を返した俺を、

「浅倉くん、待って!」

藤平が呼び止めた。

「なに?」

鋭く尋ねると藤平は、言いにくそうに続けた。


「佐和さん、時田くんと一緒じゃないかな?
この間、理科室で待ち合わせる約束してたから、多分」