ただ、キミが好き

時田と真由が?

突拍子もない展開に思考が追い付かない。

『本当に欲しいものは……いつも怖くて手に入れられないから』

真由の悲しげな顔が脳裏に浮かんで、俺は立ち止まった。


手に、入れられなかったのは。

――相手が弟だから?

雷の落ちる音がして

俺は愕然としたまま窓の外を見た。

激しく降り続ける雨は止む気配もなく。

時折、稲光が空を照らした。