『わたしは大丈夫だから、ここにはもう来ないで』

真由の下手くそな嘘を見抜けなかったわけじゃない。

でも、わかっていたところで俺が彼女にしてやれることはなにもなかった。


せめて、

子供の父親さえ分かれば――…


どんな結果になろうと、話をつけるつもりだった。

相手がどういう素性なのかは分からない。

真由がどんな恋をしていたのかも。


それでも

少なくとも真由は、そいつを愛している。

『一人にしないで! 置いていかないで!』


俺はずっとそいつの身代わりだったから

それは痛いくらいに分かっていた。