「すみませんー。校舎案内してもらえないですかあ?」

案内係の腕章をつけ、昇降口の受け付け席に立つ度、やたらと他校の女の子に声をかけられ、校内を引きずりまわされた。

――これで何回目だ?

俺は内心うんざりしながら、頬を赤くしている女の子たちに笑顔を向けた。

「すいません。今から交代なので。案内はこの人がやります」

腕章を外し、小林に渡す。

「お願いします。先輩」

ぽんと肩をたたいて、歩きだすと、

「おい、ちょっ、浅倉!」

「えぇー!!行っちゃうの!?」

非難するような高い声が背中で響いた。

ポケットの携帯を取り出す。

着信はなく俺は溜息をついた。

真由に変化があれば、彼女の母親から連絡が入る約束になっていた。