「時田くん?」

彼の様子はどこか変で。

わたしはなんとなく不安にかられながら、教室に入り、時田くんの背後に立った。

「どうかしたの?」

問いかけると、時田くんはゆっくりと振り返った。

「俺はね。
ボロボロになっても、
生きていて欲しかった。
でもそれは間違いでさ
あんなことになるなら
綺麗なまま死なせてあげればよかったんだ」

「時田くん?」

時田くんの言わんとしていることが理解できず首を傾げる。

時田くんは展示用の机に寄り掛かり、わたしを見た。

「ねえ俺、前に佐和ちゃんに言ったよね?
浅倉がはっきりしないなら、俺を見てって……。
あの返事、今、聞かせてくんない?」

時田くんは真っすぐわたしを見ていた。

なのに、わたしを擦り抜けて誰か他の人を見ている気がして。

わたしは思わず後ろを振り返った。

「佐和ちゃん?」

促す声にはっとして、彼をみる。

「返事は?」

再度尋ねられ、わたしはようやく口を開いた。