病院の廊下は薄暗く、雨の音だけが響いていた。

「一命は取り留めましたが、まだ大変危険な状態です。
出血が多かったせいで体温がかなり低下してます。
意識もまだ回復の兆しはありません。
胎児は残念ながら――」

医者の声をどこか遠くに聞きながら、俺は壁にもたれたまま目を閉じた。

『一樹には、関係ない』

真由は嘘つきだ。

キミが宿した命の父親は

やっぱり俺だったんだろう?


キミは独りで禁忌の罪に苦しんで、

独りで逝こうとした。


何も告げずに。


俺から目を逸らしたまま――…。