「吉仲、先輩がなに?」

明らかに動揺した声で問い返す。

俺はその反応に、軽く驚きながら続けた。

「一度聞こうと思ってたんだ。
お前、……彼女の弟なのか?」

真由が妊娠を告げた日。

彼女がめちゃくちゃにした部屋を片付けていた俺は、割れた写真立に、裏向きに入れられていた家族写真に気が付いた。

固い表情の幼い真由の横に立っている、小さな男の子。

どこか見覚えあるような気がして、しばらく見つめていた。

――時田?

ふと、気付いて俺は首を捻った。

もし、これが時田だったとして。

二人が他人のふりをしているのは何故だ?

理由が分からない。

例え親の離婚で引き離されたとしても。

姉弟には違いないはずなのに。