「無神経なことばっか言うなよ。
そんな演技なんてするわけないじゃん。
お前も、女なら、佐和さんの気持ち考えてやれよ?
むやみに人を傷つけるなんて最低だぞ?」

「無神経なのは藤平じゃん!
わたしの気持ちは考えたこともないくせに!」

二人の言い争いにクラスメイトの好奇の視線が集まる。

松田さんは俯き、唇を噛み締めた。

頬を涙が滑り落ちていく。

「松田?」

戸惑ったように藤平くんが彼女の名前を呼ぶと、松田さんはしゃくり上げて、顔を押さえた。

「なんでわたしばっかり責めるの?
なんでこんな女の味方ばっかりするのよ?
佐和さんは時田くんにフラフラしてサーヤを傷つけたのよ?
そのくせ今度は吉仲先輩から浅倉くんを奪うなんて最低なのは彼女じゃない!」

「松田、落ち着けって!
なに感情的になってんだよ」

困った顔で藤平くんが窘める。

「吉仲先輩が可哀相だからよ!」

言って、松田さんはわたしを睨みながら真横に立った。

「これ以上二人の間にでしゃばるの辞めなよ
吉仲先輩、妊娠してるんだから」

みんなに聞こえないくらいの小声で囁き、

「松田…お前何言って……? ちょっ、待ってて!」

そのまま身を翻して、駆け出して行った彼女を、藤平くんが追いかけていった。

わたしは呆然と立ち尽くしたまま、二人の背中を見送った。


なに?

わからない。

今、何て言ったの?