その意図を察して、俺は吐き気を覚えた。

要するに

真由に堕胎させ、噂が立たないうちに他校に編入させて、学校には金を渡して問題を揉み消させる。

そう言いたいのだろう。

「それが自分達に面倒がかからない最善策ってことなんだ?」

ポケットに両手を入れ、剣呑な目向けると

「……真由とあなたのこと考えて言ってるの。
あなただって、姉さんのとばっちりは受けたくないでしょ?」

母親は煩わしそうに、アップにした髪の後れ毛を整え、顔をしかめた。

「……とばっちり?」

はっ、と笑いが漏れる。

「とばっちりなんかじゃないよ。
俺は……」

「一樹っ!!」

真由が遮るように叫んで、母親の腕を引いた。

「あなたには、関係ないって言ったでしょう?
わたしのことには関わらないで」

早口で告げて、俺の横を通りすぎていく。

その後ろ姿に伸ばしかけた手を、握りしめて、壁に寄り掛かった。

関係、ない

そう言われる度、

俺は思い知らされる。


俺は真由に必要な人間じゃない。

どんなに

どんなに

彼女を思っても。