――なのに
「吉仲先輩今生徒指導室に呼び出されてるわよ」
――アヤの言葉に
「吉仲先輩が産婦人科に入っていくところを見かけた子がいるらしいの。真偽を問い質してるみたい」
――理性が弾け飛んで
「吉仲先輩。
たぶん妊娠してるわよ?」
――気付いたら
身体が、勝手に駆け出していた。
体当たりのように昇降口のドアを開ける。
一階にある生徒指導室の手前で、俺は立ち止まった。
ぴんと綺麗に姿勢を正した真由が、鞄を持って、廊下に立っていた。
「…………」
足音に気付いたのか、少し痩せた顔を俺に向ける。
一瞬、躊躇ったように瞳を揺らした後、彼女は真っ直ぐに俺を見つめた。
「……妊娠してるって、本当?」
声が掠れる。
「………まさか、それって、俺の……」
「違うわ」
真由はきっぱりと言って、顔を逸らした。
長い髪を払い、前を見据える。
「……じゃあ、相手は誰だよ? 浅倉!?」
「蓮とは、別れたわ」
「どういう意味?
浅倉が逃げたってこと?」
「あなたには、関係ないわ」
俺は口元を歪め、頬を引き攣らせて笑った。
「いっつもそうだね。
関係ない。関係ない。関係ない!!」
ガンッと壁に拳をたたき付ける。
やり場のないどす黒い怒りが胸に渦巻いて、コントロールできないまま叫んだ。
「吉仲先輩今生徒指導室に呼び出されてるわよ」
――アヤの言葉に
「吉仲先輩が産婦人科に入っていくところを見かけた子がいるらしいの。真偽を問い質してるみたい」
――理性が弾け飛んで
「吉仲先輩。
たぶん妊娠してるわよ?」
――気付いたら
身体が、勝手に駆け出していた。
体当たりのように昇降口のドアを開ける。
一階にある生徒指導室の手前で、俺は立ち止まった。
ぴんと綺麗に姿勢を正した真由が、鞄を持って、廊下に立っていた。
「…………」
足音に気付いたのか、少し痩せた顔を俺に向ける。
一瞬、躊躇ったように瞳を揺らした後、彼女は真っ直ぐに俺を見つめた。
「……妊娠してるって、本当?」
声が掠れる。
「………まさか、それって、俺の……」
「違うわ」
真由はきっぱりと言って、顔を逸らした。
長い髪を払い、前を見据える。
「……じゃあ、相手は誰だよ? 浅倉!?」
「蓮とは、別れたわ」
「どういう意味?
浅倉が逃げたってこと?」
「あなたには、関係ないわ」
俺は口元を歪め、頬を引き攣らせて笑った。
「いっつもそうだね。
関係ない。関係ない。関係ない!!」
ガンッと壁に拳をたたき付ける。
やり場のないどす黒い怒りが胸に渦巻いて、コントロールできないまま叫んだ。


