体育館まで機材を運び込んだ後、俺は腕に痛みを感じて、顔をしかめた。

傷口が開いたらしい。

白いシャツに血が滲んでいる。

ちっと舌打ちして、シャツの袖を捲くり上げた。

佐和ミコトの信用を得るためとは言え、

今回のことは、とんだとばっちりだった。

馬鹿な女の嫉妬心を煽るのも、大概にすべきだったかと後悔していると、

「一樹?」

数人の友達と連れ立って、体育館へ向かっていたアヤが、手を振って俺に近づいて来た。

「もしかしてサーヤに刺された傷? 開いちゃったの?」

覗き込んでくるアヤから、隠すように腕を下ろす。

「たいしたことないよ」

肩を竦めて見せると、アヤは首を傾げて俺を見上げた。

「サーヤ泣いてるわよ?
一樹が話もしてくれないって」

「自業自得じゃないの?」

「まあ、そうだけどね」

くすくす笑って、アヤは俺の肩に手を置き、内緒話するように耳元に唇を近づけた。

「ねぇ、一樹。私、分かっちゃった」