ただ、キミが好き

予鈴のチャイムが鳴って、わたし達は教室に向かって歩き出した。

今日一日は授業はなく、文化祭準備にあてられている。

明日が本番なので教室の3分の2は暗幕が引かれ、お茶屋風の飾り付けが進んでいた。

床にはごちゃごちゃとダンボールが散乱している。

わたしが足を踏み入れた途端、騒がしかった教室が、一瞬しんと静まり返った。

松田さん達のグループが距離をとるように教室の隅に移動していく。

藤平くんが顔をしかめ、

「相っかわらず感じ悪いなー」

わざと彼女たちに聞こえるように吐き捨てた。

「大丈夫だから」

わたしは笑うと自分の持ち場に戻った。

甘味処のユニフォームである着物風の上衣を縫い上げていると、同じ衣装係の女の子たちが近づいて来た。

「松田さんたちのことはさ、気にする事ないよ。
単なる嫉妬だしさ」

「佐和さん裁縫上手いよね。デザイン画とかも本格的だったし。
デザイナーとか目指してるの?」

「ううん、まさか」

思ってもみないことに笑って、首を振りながら、

でもどこかで、はっとしていた。

わたし。

自分のコンプレックスだけに必死で、将来なんて考えたことなかった。